オレンジ色

雑談とか日常思ったこととか

自分に合う小説、合わない小説

まとめ

合う小説は、主人公含む主要人物の心境が理解できるもの、

合わないのは、理解できない・したくない・嫌悪するもの。

合う小説ばかり読まずあえて合わない小説を読むほうが、

人間の多様さを感じられて良い経験になる。

 

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今日、ひさびさに小説を読んだところ、

ほんとにひどく胸クソ悪い感覚に苛まれました。

 

僕はミステリーが好きなので、今回もミステリーを読んでいました。

「火の粉」雫井脩介

 

火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)

 

ストーリーはざっくりいうと

 無罪判決を得た殺人事件の元容疑者が、

 その判決を出した裁判官の隣の家に引っ越してきました。

 善意の押し付けとも言えるくらいに善意を振りまく元容疑者がいる一方、

 一家のなかではただならぬいざこざが次々と勃発していく、

 ホラー展開ありのミステリー。

といったところです。

 

ストーリー展開はハラハラしましたし、内容は素晴らしいと感じました。

 

でも、登場人物が僕には合いませんでした。

なんというか、それぞれの人間味がすごくあって、

 恥を恐れて見栄を張ったり

 むやみに対立姿勢を出して事態を混沌としたり

 報われない意地を貫いたり

 理由なく人を蔑んで人間関係が悪かったり

 脳天気でただただ反応的だったり

一貫して、まさに人間的だと感じました。

 

それぞれが別々に独自の視点を語るからすれ違いが生じて、

すれ違いの解消のために自分の視点を互いに押し付けていく、

いざこざがたえない人間社会を揶揄しているような感覚でした。

 

登場人物の特徴があまりにはっきりしすぎた、それが僕に合わなかった原因だと思います。

 

登場人物に悩みが少ないといいますか、

自分の思考過程に悩まずに、

ただただ自分の結論をいかに相手に認めさせるかを考える人ばっかりでした。

 

それが本当の社会を表しているのかもしれません。

互いに「相手が悪い」と主張してる人間関係、

主張の押し付け合いこそがコミュニケーションだと思っている愚か者、

読んでいて、ほんとうにイライラしました。

 

些細な成果を求めて意地をはって自分を壊すとかを見ると、

意地なんて捨てちまえ、と思うわけです。

「男の意地」「女の意地」

大きな成果を得られる可能性があれば賭けるのもわかります。

「本人にとってのみ」大きな問題、というのは、

往々に非効率で非生産的で不幸を呼びこむと思います。

例えば本作でもでてきましたが、

親や姑の介護は自分の手に負えない範囲でやるものじゃないと思います。

意地を張ってでもなんとかやっている人はそれでいいと思いますが、

耐え切れなくなっても意地でなんとかしている状態が好きじゃないのです。

 

従業員がタダ働きしたら会社が存続できるから、意地でみんなで乗り切ろう!みたいな感じ。

意地張って成果があるならいいですよ。

ないなら「さようなら」と言わなきゃダメだと思うのです。

 

自分の考えを冷静に修正できる人間、

僕はそんな人が社会に多いと信じたいし、

社会はそんな人が報われると信じたいです。

 

一方で、そんな人間ばかりでないことを、この小説で思い知りました。

解説やレビューを見ても、心理描写が優れている小説だそうですから、

この小説の登場人物のような人間も、世の中にいるのでしょう。

いろんな人がいるものだと勉強になりつつも、

腹立たしく、虚しく感じる小説でした。